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双一次 Z 変換 の思い出 [SDR]

 アナログ・デバイセズ社のメルマガで、『石井聡の回路設計WEBラボ』連載再開のお知らせが届きました。

再開の第1回目は「双一次変換」です。
これは、連続世界を離散世界に変換する有名な変換です。これを知ったのは、大学4年で研究室に入った時です。その頃は、「双一次 Z 変換」 と呼ばれていました。

大学4年で卒業研究のため、それぞれの研究室に入る訳ですが、その時に各研究室が研究テーマを公開し、卒研生を募集します。私が応募したテーマは、「ディジタル・フィルター」でした。
フィルター回路がディジタル回路で作れる事に新鮮さを感じて、応募したのです。

その頃、ディジタル信号処理の本は日本にまだありませんでした。
その時に参考にしたのが AMD のこの本です。
DSC09460.JPG
これは、AMD が彼らのデバイスを販売するために出していたデータブックです。

そのオマケにディジタル信号処理の解説がありました。
DSC09463.JPG
この中に s : z 変換の方法として、「双一次 Z 変換」の説明がありました。

そして、卒研、修論のテーマとして、2次の IIR フィルターを作りました。

その時に使った乗算器がこれです。
DSC09462.JPG
当時はとても高価で、年に1個しか買えませんでした。それで1年目で1次のフィルターを作り、2年目で2次のフィルターを作りました。その際にディジタル・フィルターを設計するのに使ったのが、この「双一次 Z 変換」です。

本来、ディジタル・フィルターの特性を変えるには、乗算する係数を変えて、特性を変えます。
しかし、フィルターの使用目的から係数を変えるのではなく、クロック周波数を変えて、特性を変更しました。そのため、クロック回路は PLL にして、マイコンから周波数を変えました。AD 変換のサンプリング周波数も変わるため、エイリアス防止の前段の LPF もマイコンで特性可変にしました。全体を動かすシーケンサーもバイポーラの PROM を使って、パターン・ジェネレーターもどきにし、クロック可変で動くようにしました。

バイポーラの PROM は、学生に少量のデバイスを売ってくれた TI の物を使いました。TI に電話をして、学生なので、数個でも売ってくれないかと頼んだら、取りにおいでといわれ、原宿駅から青山まで歩いて、TI のオフィスに取りに行きました。オフィスに入ると、受付のお姉さんは、タンクトップにヘッドセットを付けて、電話の応対もしていました。PROM を分けてもらいに来たと告げると、担当者を呼んでくれました。出てきた担当者は、ビジネス・スーツをビシッと着こなした、若い女性で、スティック入りの PROM を受け取り、代金の小銭を渡すと、事務所へ戻って行かれました。初めての外資系企業の雰囲気に圧倒されたのを鮮明に覚えています。
このバイポーラの PROM は、日本メーカーも作っていたのですが、某F社に電話して、学生なので、少量を分けてほしいと言ったのに、最低発注数は1,000個だよと冷たくあしらわれたのをしっかり覚えています。
あの時、TI が分けれくれなければ、修論は完成しなかったと思います。

あの頃、いろいろと考えながら、システムを作っていくのは、本当に楽しかった。
データブックも、文献も全部英語で、それまで英語を避けてきたけど、避けようがなく、しょっちゅう辞書を引いていました。今は翻訳ソフトがあって、便利になったもんだと思います。
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